新作「アイドルマスター LiveForYou!」略してL4U(以下同)が「明日発売と言うことは今日フラゲットさせちゃう販社としちゃう人がいるワケなので、今のうちにもの申しておなかいとならぬことがあるのです。私はオフィシャル通販で高額商品につきキャンセルできないヤツ(笑)を注文してしまっているので、もう逃げ場はありませんから。
<1.そもそも>
このBlogを長らくお読みの方はご存じかと思いますが、ワタクシはXBOX360ユーザであると共に、「THE iDOLM@STER」に関してはアーケード版以来のプレイヤー、いわゆる「プロデューサーさん」でございます。
ということで予習の時間です
【特別企画】そもそも「アイドルマスター」ってなんなんだ?(前編)
【特別企画】そもそも「アイドルマスター」ってなんなんだ?(後編)
(以上ascii.jpより)
まあちょっと上記の記事も痛々しい部分だけがクローズアップされてしまっていますが、ぶっちゃけだいたいこういうことです。
かくいうワタクシも、わざわざゲーセンに出向いて1プレイ200円3プレイ500円を投じたあげくゲーセンでギャルゲをやる痛い30男の姿をヤング(死語)衆目に晒す時代から始まって、アイマス(とOutFit)をプレイするためにXBOX360を購入、八方手を尽くしてアイマスは限定パッケージを購入し伊織の出来の悪さに涙したあげく、もはや数えるのも困難な数のCDと新木場有明2回のライヴ、およそ1万ゲイツ(注1)これ以上はキツかった)になんなんとするDLC(ダウンロードコンテンツ)を購入。
この3年間で既に6桁超えの浪費をつぎ込んでいる、完全にカモられていると申しましょう。
おそらく、今の流れが続けば、あと優に1年ぐらいはアイマスというコンテンツにハマッているであろうと自分でも考えていたのです。
つい先日までは。
(注1)3500MSP(ヨドバシで\4720)×3枚。アイマス以外のDLCはカタンとゴールデンアックス(笑)を購入w
<2.アイマス草創期(アーケード版)からニコ動全盛期へ>
とりあえずL4Uというのは、「アイドルたちのライブをコーディネートする」ゲームです。
前作と何が違うねんと思うかも知れませんが、前作…というか本編に相当する「THE iDOLM@STER」(以下アイマス)は、あくまでも「プロデューサー」として10人からなる自社の所属のアイドルを育て、オーディションという名のネットワーク対戦によりファン(=スコア)を獲得する、その合間にアイドルに助言したり励ましたりわざとからかったりすげなくしてみたりすることで反応を楽しむというゲームでありました。
予習のリンク先にもありましたが、オーディションに勝つと、ご褒美的にプロデュース中のアイドル(ユニット)がTV出演して唄い踊る様子をモニターで見ることができます。
ところが、何組ものユニットをプロデュースし、プレイ期間が延びる(=ファンが増えることで人気上昇、活動期間が長くなることの表現)と、元々10曲(360で+5曲)しかない曲を、場合によっては何十回も聴くことになります。(注2)
多くのプロデューサたち同様、私ももう、余り好きではない曲以外ほとんどの曲をそらで歌えます。
そうなると、獲得ファン数を増やし、アイドルマスター(プレイヤーの最高ランク)を目指す者は非常に多くのプレイ数をこなすこととなるため、ギャルゲ要素、音楽ともある意味飽きが来ることは否定できません。
また、特にアーケード版で言えることなのですが、アイマスは一回のプレイ(1~3クレジットが普通、10クレ20クレと延々続ける豪傑もいた)に割と時間がかかります。(注3)
そこで、スコア重視のプレイヤーはオーディションを数多く戦う都合上、ゲームの設定でTV中継(皆さんがよく知っている、動画サイトにアップされているような歌唱シーン)を自動スキップしてしまうようになりました。
もちろんキャラクターや歌の魅力もプレイヤーにアピールするところ大であったのですが、アーケード版においては、むしろやり込みゲームになってしまったせいで、そう言った、いわば玩弄物、広義の萌え要素としてよりよりも、アイドル達の位置づけはは文字通りの(戦闘)ユニット、プロデューサである自分と共に芸能界のランキングをのし上がるパートナーへと変化していったのです。(注4)
この頃は何と言ってもアーケード版だけに、実際に遊ばせてみないことにはゲームの面白さが伝わりにくく敷居が高い上に、かつどうしてもギャルゲであることで抵抗が強い、ということで、どうしても爆発的ヒットにはなり得ない存在であったと言えます。
これが商業的にも、ファンのあり方においても大きな転換を迎えるのは、XBOX360版の発売です。
この詳細については次項で述べるとして、なぜこのように話を進めるかというと、今回のL4Uは明らかに、この転換後のファンを主なターゲットとしたコンセプトによって作られていると思えるからなのです。
(注2)プロデュースする特定のユニットが一定回数のプレイまでにある一定のファン数を獲得すると、アイドルのランクが上がりプレイ可能な回数を増やすことができる。できないとその回で強制解散。最終ランクであるSランクに達すると、制限は無くなるのでファン数は理論上は青天井(笑)。
ユニットが解散(ゲームオーバー)になるまで、アーケード版では最大3曲、XBOX360版では5曲までリリースできる。同じ曲を唄わせ続けるとファンに飽きられ人気が落ちていくので、その制限内でどれだけファンを増やせるかがゲームのポイントの一つ。
(注3)1クレジットでできることは、オーディション(ネット対戦)あるいはレッスン&コミュニケーション(能力向上のためのミニゲームとギャルゲ行為)のどちらか。前者は序盤の準備+オーディション+TV出演、で5~6分、後者はレッスン3分+ギャルゲ2分という感じ。
当初は200円/1cr・500円3crが多かったため、待ち人のことを考えて、500円投入しておおよそ20分ぐらいがプレイの目安であった。
筆者がもっともハマっていたとき、近在のゲーセンが500円で1時間フリープレイという恐ろしい設定を始めたので、毎晩のんびりと活動に励むことができたのは幸運であった。
(注4)もっとも、あの絵柄(笑)もあってそう言った萌え要素は元々薄く、ゲーム内で思い入れを深めた人以外にとっては今ひとつアピールしないものがあった。今なお同人などでもアイマスはメガジャンルになったとは言い難い。
何と言っても(人気ジャンルに必ずいる、本編見てない/遊んでない、けど描いちゃう人が多いところの)エロが少ないし、そのことは逆説的に、アイマスのコアなファンがアイドルを必ずしもそういった単なる鑑賞物、見せ物的に萌える存在として見ていなかったとも考えられる。
<3.家庭用移植によるパラダイムシフト>
そろそろ書くこと自体に疲れてきたので、頑張ってバッサリと行きます。
2007年初頭に、XBOX360版ソフトとして、件の「THE いDOLM@STER」が発売されたわけですが、前述したとおりここでゲーム性、ファンへのアピールという点で大きな変化がありました。
世間においては、家庭用移植によるゲーム自体の流通増加や、DLC(ダウンロードコンテンツ)による拡張性とその莫大な売り上げ、などがよく取り上げられますが、ソレ自体は次に上げる二つのことほど重要ではありません。
ぶっちゃけて言えば
【その一】オーディションに負けても即リセットできる
【その二】画面が録画できる
この二つが、アイマスというゲームを取り巻く様相をすっかり変えてしまったと言うことができるのです。
まず、一つめのリセットについてですが、アーケード版はデータの保存はカードによって行われ、一度プレイした内容を無かったことにするのは不可能でした。つまり、オーディションに負ける、あるいはコミュニケーションパートでバッドな結果が出たからといって、そこだけをリセットしてやり直すことはできないわけです。(注5)
しかも、ユニットがアイドル達の評価とプレイの継続に関わる「アイドルランク」の最上級であるSランクに達するためには、ある特定のオーディションに勝利するまで一度も負けてはならないのです。
つまり、序盤で一度でも負けた瞬間、そのユニットのプレイ時間には制限が課せられるワケです。適当にやってユニット自体を葬るわけにも行きません。低ランクでのユニット活動終了はプロデューサ本人のランクに影響を与えてしまいます。
苦労を重ねて手に入れた「アイドルマスター」の称号を失わないためには、先の見えているアイドル達と、それでも可能な限りの好成績を求めて切ない消化試合を戦う強さが必要です。
家庭用ゲームになったことで、内蔵HDDもしくはメモリユニットにデータを保存する仕様になったわけですが、セーブは操作ごとの随時(かつての「Wizardry」のような)では無く、オーディション、レッスンと言ったワンプレイの終了時に保存するか否かを聞かれる形になりました。日数経過型のアドベンチャー(有り体に言えばギャルゲ)と同様のシステムになったわけです。
プレイヤーにおける、ある特定のアイドルユニットに対する愛着や価値観が減退するのは避けられません。(注6)
もう一つの録画については、XBOX版の発売がちょうどまさにYoutubeやStage6(冥福をお祈りいたします)、後のニコニコ動画と言った動画投稿サイトの勃興期に当たっていたこともあり、ライブシーンやコミュニケーションパートのアップロードが非常に盛り上がりました。「とかちつくちて」と言うヤツです。
後には、アイマスのライブシーンを映像素材として、CD曲のフルヴァージョンやカバーアルバムの曲、果てはアイマスと関係ない歌のPVを作成する「アイマスMAD」が大流行し、ゲームをプレイしたことのない人々にも「アイマス」の名が広く知れ渡ることとなりました。
これによりゲームソフト、DLCや関連CD、さらにはXBOX本体の売り上げまで牽引するゲーム界における一大マーケットができあがってしまいました。
また、当初非常にスキ間なコンテンツ(ハッキリ言えばアーケードゲーム用特殊筐体の延命策)として作られたため予算も低かったアイマスのことです。
アイドルを演じる声優もほとんどが無名かそれに近い人たちばかり(今にして思えば釘宮理恵が入っていたのが信じられない)でしたが、この辺りで急速に「中の人」が注目を集め、先の動画を「見る専」な声優ファンやアイドルファンの流入を招きそれまでの規模を想定していた昨秋のアイマスファン向けライブが突然チケット入手困難になる惨状(笑)が見られました。
また、ニコニコ動画のコメント機能で、MADムービーに対してイロイロと相の手を入れる「コメント職人」が現れるなど、アイマスというキャラクターコンテンツはちょっとアクティブなオタクにとって格好の遊び道具となった感があります。
ここにおいて、アイドルマスターというコンテンツを愛する人々には、旧来の「プロデューサ族」(MAD作者もこちらに含めてよろしいかと)と、動画(それも無料の)を見ることから始めた「見物客」に大きく二分されることになったのです。
両者の間には、投資量(時間的に先行している、アーケードは日銭が必要)、思い入れ(アイドルは戦友)、ゲーム世界への愛着(アイマスはオレらが育てた)といったちょっとウザイ部分において大きな温度差があります。
XBOXを買ったとしても、そこから入った人々が、アーケード版からのプレイヤーほどの気合いを容易には持ち得ないことは前項で述べたとおりです。
(注5)アーケード版では、二枚のカードを利用する。プレイヤー自身の戦績やランキングを記録する「プロデューサカード」と、一つ一つのアイドルユニットを表す「ユニットカード」である。プロデューサランク(簡単に言えばプレイ歴)によって何人のユニットを何組並行して扱えるかが決まってくる。プロデューサカードには、9人のアイドルのうちいま誰をプロデュースしている(ユニットカードを作った)かが記録されているので、ユニットのプロデュースを終了するまで、そのユニットに参加したアイドルを再び新たなユニットに起用することはできない。不本意な展開になったカードを捨ててしまうことはできないのだ。
プロデューサカード自体をまた一から作ることはできるが、それは全くナンセンスであることは言うまでもない。
(注6)プレイヤーとキャラクターはいわば「芸能界でのサクセスストーリー」を歩むことになる。途中に挫折のない、成功だけに彩られた人生行路が空しいことは言うまでもないし、ひとたびリセットしたら、そのことは天知る地知る君知る我知る。
また、アーケード版においても、システムトラブル時などに店舗側のみが使用できるシステムメニューで、限られた範囲でカードのデータを巻き戻すことができなくもなかった。この手段を悪用し、店員と手を組んだ、あるいは店員自身のプレイにおいて不正にデータをリセットした者がそれにより全国ランキングに入ったことが発覚し、激しいバッシングを受けたことも付記しておく。
<4.LiveForYouがなぜヤバイのか、はたまたオレが必死すぎて痛いだけなのか>
L4Uは明らかに、後者の人々をターゲットにしたゲームです。
なぜなら、今回のゲーム内における主体、プレイヤーこと「特別プロデューサー」は、ファンの中から選ばれて一夜のライブをコーディネート(プロモートと言いたいところだがそこまでではない)することになったという設定です。
では、今まで765プロのアイドルを育ててきた「アイドルマスター」である我々プロデューサーは?
彼らはこのライブに関して、設定上全く関わることができません。今回ライブの諸要素を決定し、アイドル達に指示を出すのは、どこの馬の骨とも知れない、有り体に言えばそこらのキモオタ代表なのです。プロデューサは関係者席かどこかで黙って見てろ、とまあそう言うことになります。例えコントローラを握っているのが同じ我々自身であっても、それは我々であって我々ではないのです。
かといって、ファン代表とやらに成り代わって新たな気持ちでアイドルと向き合おうにも、「はじめまして、特別プロデューサ」と言われる運命なんですね。また寂しからずや!
さらには、そんな特別プロデューサーとやらが自らセッティングしたライブで何をするかと思えば
オタ芸(wikipediaより)でございますかよ。
もちろん、発売する側としては今の段階でまだ一円もお金を落としていない、早い話がニコ動見てウハウハしてる連中にXBOX買わせて職人気分に浸ってもらうことでより一層の増収が見込めるわけですから、商売として新たな方向に広げようとすることは全く間違っていません。
しかし、どんなものでもムーブメントを支えているのは、プロダクトがまだ未成熟なうちからその可能性に気づき、多少の不便を堪え忍んでも期待と思い入れで補完をキメることが出来るアクティブなアーリーユーザであるものです。
ハッキリ言って、今回の新作で取り込まれる新規ユーザ層というのは、他に面白そうなものが見つかったらすぐ逃げる、忠誠心の乏しい連中だと思うんですよ。
ひとたび今回の新作で「アイドル&プロデューサ」と言う愉快で幸せなな関係を断ち切ってしまったことが、大量の(しかし浮動層である)ライトユーザと引き替えにそういったアーリーユーザの失望と、場合によっては遊離を招いてしまうのではないか、そうなった場合、せっかくのアイマスというコンテンツを長期にわたってささえてくれるはずだった層を失う(かもしれない)ことで、今後のさらなる発展を考えたときに思わぬ落とし穴とならぬものかと危惧するところなのです。
もちろん、L4Uが予想を遙かに超える神プロダクトであって、ライトユーザをこれ一発で信者に買えてしまうほどのポテンシャルを秘めているのであれば、それはそれで喜ぶべき事です。
でも、オレの千早(と書いてみる)や幼いやよいをどこの馬の骨とも知れないキモオタにいじり回されるのはどうしてもシャクゼンとしないなあ。
せめて、ゲーム中で特別プロデューサがアイドル達に埒を踏み越えた言動に出ようとしたときに「プロデューサさんがなんて言うか…」みたいな言葉が出てきてくれることを切に望みます。
<終わりに>
あー疲れた。推敲とかしてないのでまああまり気にするな。